さよならは誰のために?
寝台列車が廃止になったり、ローカル路線が廃線になったりするときに、集まった鉄道ファンたちは「ありがとう」とか「さようなら」とか言います。
あれは誰に向かって言っているのでしょうか。機関車でしょうか。列車全体でしょうか。それとも運転士に対してでしょうか。
彼らは、誰に対してでもなく、自分自身に対して「ありがとう」と言っているのではないのか。
言い換えるなら、自分が過ごした時代、自分が属した社会に対する惜別の念を表現しているのではないのか。
鉄道とは心の風景画である。
最近そんなふうに思えて仕方がありません。
▲寝台特急「北陸」の廃止と、急行「能登」の臨時化が重なった2010年3月12日、上野駅には別れを惜しむ人たちがたくさん訪れ、文字通り、立錐の余地もない状態となった。筆者撮影。